鉄ジャーに見る路面電車の10年(9年)

maksim7272006-02-09

年末に見てきた熊本市電が1996年12月の鉄道ジャーナルで取り上げられていました。
「これからの都市交通と路面電車」という特集で、熊本市電とヨーロッパのトラム事情を扱っていたのです。
以下、特記の無い限り箱で囲ってある引用は鉄ジャーからです。
まず驚くべきは、この時の

熊本市電LRV前夜

と言う特集名ですね。最近はLRTもLRVごっちゃになって使われる場合が多いですが、この頃はまだ、単語自体が浸透していない事もあってか、しっかりLRVとなっています。ついでに言うと、タイトルが示すようにこの時はまだ、低床車9700系は導入されていません。だから、低床車導入に関してはいろんな不安や期待が見られます。まず製造元の新潟鉄工から。

 需要が頭打ちとなった新交通システム車両に代わるものとして路面電車新造に
目をつけた新潟鉄工所の意向と、
。。。中略。。。
また、その超低床車用台車はライセンス生産である一方、日本で新方式を開発し
てまでの路面電車新製の需要が生じるかは、はなはだ疑問であることも、提携生
産の要因となった。

この頃は、ノンステップバスはあれど、ノンステップ路面電車は国内には皆無。しかも、今ほどLRTに対する認識も無く更に、多くの事業者は元気も無く、バスならとっくに博物館入りの年代ものの路面電車が走っていると言うのが実情でしたから、新潟鐵工所の疑問ももっともです。しかしながら、現在は全低床から一部低床まで様々な路面電車が走ってます。熊本市と新潟鉄工の功績は大きいですね。
また、

。。。中略。。。
「これまでのVVVF車の2倍にあたる大きな投資ですし、容易なことではありません
。これで失敗すれば、日本には定着しないのでは・・・」と語るほどに、日本の
路面電車の将来を方向づける試金石でもある。

と交通局の人も言うように、最初の物が失敗すれば、後に続く者なんて現れなかっただろうから、熊本での低床車導入は日本のトラムにとって重要な問題だったのでしょうね。
熊本の成果を見てその後、広島・岡山・高知・松山・長崎なんかも100%低床車を導入しましたから、熊本の路面電車が日本の路面電車を変えたと言っても良いのでしょう。
さて、だんだん面倒くさくなってきたから、終わりを急ぐと、この路面電車導入は、新潟鐵工所が新型路面電車を売り込んで、熊本が導入したと言う単純なものではないらしく、建設省も巻き込んで導入する何年も前から、検討を繰り返してきたものだそうです。なんせ従来の物とは全く違う、床を低くしただけに見えて実は全く新しい路面電車なのですから。ついでに、建設省は前向きだったそうです。
熊本市電は低床車を導入する前から電停の改良なんかも積極的に行っていたようなので、建設省も乗り気だったのでしょうね。これがもし、岐阜とか西鉄とかだったら、また違った態度をとったんじゃないでしょうか。
現在の熊本は、車両の改良は進んだものの、信号待ちとか電停までのアクセス(歩道橋を登ったりする所があるのよ)なんかに課題が多いと思うので、今後に期待です。多分、急速に退化することは無いと思うので。この本が出された時でさえ、朝のラッシュ時、健軍付近での各交通機関とのスピード比べでは市電が自家用車を抜きトップで、周辺でバスから市電へ乗り換えする人も居たそうですから。
以上、簡単にまとめて見ましたが、惜しむらくは当時の自分がこの鉄ジャーの記事を、どんな気持ちで読んでいたのかを思い出せない事です。思い出せれば、LRTとLRVの盛り上がりも振り返れたんですけどね。

おしまい。